先日の合宿で弐段の審査を受けて昇段されたK.N.さんの審査用小論文を、許可を得て掲載します。(23/5/28更新)


「合気道と自転車トレーニング」

 私は自転車競技のトレーニングをメインとして日々の運動を行っている。その中で合気道の稽古も進めてきた。 合気道の中にある身体の使い方や相手とのつながりを意識した稽古は日常生活の役に立つものばかりである。 もちろん、自転車競技の中でも非常に役に立つ動きばかりであると認識している。 本文書では、私がこれまで体験した合気道の動きと自転車競技におけるトレーニングのつながりについて記す。


 まず、私の合気道との関わりについて説明する。 合気道は強い動機があって始めた訳ではなく、以前から「何かしら『武道』を体験してみたい」「体幹を鍛えられる競技をやってみたい」という思いがあり、 そのタイミングで誘われて始めたものであった。合気道を始めたばかりのころは動作の意味が理解できなかったが、 実際に身体を動かして身につく内に合気道の面白さが理解できるようになってきた。 少ない動きで無理をせずに相手に力を伝える「自身の身体の使い方」、相手の関節を極めることにより相手を動かしていくような 「相手の身体の動かし方」といった効率の良い身体の使い方に、特に合気道の面白さを感じて今日まで続けてきた。


 次に、私が行っている自転車競技とそのトレーニングについて説明する。 自転車競技においては、ペダルを回して推進力を得る自転車の特性通りに脚力が絶対的に重要である。 強くペダルを回し、高い推進力を生み出し続ける必要がある。ただし、足の筋肉だけを鍛えれば高い推進力を得られるというわけでは無い。 脚力はもちろん重要であるが、強い踏み出しのためには姿勢を安定させる必要があり、そのための腹筋や背筋が必要である。 また、ペダルを強く回すとそれだけ強い反動が発生するが、この反動を受け止めるための上半身の力が必要である。 総じて、高い推進力を得るためには筋力だけではなく、体幹コントロールが重要になってくる。 下半身で高い推進力を得るための安定した姿勢をとる必要がある。 また、自転車競技としてみたとき、集団で走行するため、常に周囲の状況を把握する必要がある。1人だけでレースを走ることはできない。 協力して走る際はお互いにひとかたまりとなって風よけし合うことにより省エネルギーで走る、危険な動きをする選手を避けるように行動する、 相手より速く走るためにコースを理解して自分が得意な位置で相手より前に出る、など、集団の状況を把握し自身に有利な行動をとることでレースを進めていく必要がある。 このように自転車競技は単純に脚力の強さだけで勝敗が決まる競技ではなく、うまく状況を読み取ることも大切な競技である。


 最後に、上記のような自転車競技の特性と合気道の動きのつながりについて、私の体験を踏まえてまとめる。 合気道の稽古を行っていくなかで、特に丹田への意識を強く感じるようになった。この意識が自転車競技のトレーニングにおいても役に立っている。 丹田を意識することで、上半身と下半身をそれぞれ分割して動作させるイメージができるようになった。 丹田を中心として上半身を保つことでバランスをとり身体を安定させ、その上で足を強く蹴りだしてペダルを回し、強い推進力を生みだす。 これにより全身として強い推進力を生みだすことができるようになった。 ただし、現時点で長時間強い推進力を生み出しつつ姿勢を保つことはまだできていないので、更に意識を高め、強い身体を作っていきたい。 また、レースにおいては常に周囲の状況を把握する必要があるが、合気道における「相手とのつながりを感じる」稽古により、 合気道を経験する前よりも更に相手の動きを把握する精度が上がったと感じている。 相手に触れていない時でも、視覚や聴覚等の感覚をフル活用して相手を意識するのは自転車競技においても大事である。


 私が合気道の稽古を行っていくことで、メインの競技の自転車においても、その動作をより良くすることができている。 今後も両者並行して研鑽を積み、お互いにレベルアップさせていきたい。


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